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2006.11.01

失敗学・・・真のベテランとは

NHK教育テレビ 知るを楽しむ この人この世界 「だから失敗は起こる」の再放送を見た。
講師は「失敗学」の権威、新宿の工学院大学 畑村洋太郎教授。
ピンと来たので、番組を見ながら要点を書き出してみた・・・せっかくの休日に、私は何をやっているんだろう(^^;)


「偽(にせ)のベテラン 真のベテラン」

「偽のベテラン」
 決まり切ったこと、決められたことをやるだけ。失敗の経験をほとんどしていない。自分はちゃんと決められたことをしているからいいんだ、と錯覚している。うまくいくやり方だけしか出来なくなる。少し条件がかわっただけで事故がおきる。いまやっていることしか考えず、見ることもできない人が活動するようになる。非常にひ弱な組織になる。その時、思わぬ外からの外乱が加わると、破滅がおこってしまう。
マニュアル通りにやることしかできない。考えないでマニュアル通りにしかできない。でも、見かけ上、うまくいっている場合が多い。決まり切った形でやると、失敗のもと。

本来、マニュアルというのは、生産や活動をするのに絶対必要なこと。過去にやった、いろんな事柄が集約され、いちばんいい知識がマニュアル。なのに、マニュアルに従ってやっているとまずくなってしまう。参加する人が、マニュアル通りにやるだけで考えなくなるから。=偽ベテランになってしまうから。

「真のベテラン」
 常になにか起こったときの仮想演習、危機管理、をしていて、臨機応変に対応できる。自分で判断、自分で試して、毎回、頭の中に、科学的な理解を作りながら、新しい全体像を作り直すということをやる。

(例)シンドラーエレベーターの事故
偽ベテランは、「じゃあ、エレベータの事故をなくせばいいんですね」となる。
そうではなく、エレベーターの事故とはどんなものなのか? エレベーター事故の起こる背景にある、経済的なカラクリはどうなっているか? 製造者とメンテナンス会社との関係はどうなっているのか?というところに着目しなければいけない。背景も含めて、幅広くエレベーターの事故を取り扱うといい。

真のベテランは・・・失敗をどう理解し、どう対応するか? 自分の仕事の場合、どんなことを想定しなければいけないのか? そういうことを、自分で全部作り上げていく学び方をしている。決して、どっかでできあがった物を持ってきて、上手にそれに倣ってやりなさい、なんて、要求をしない。

人間が新しい物をつくるプロセスには法則性がある。
「頭にあるものを一度全部吐き出し、表出し、関連を見ながら全体を構築していく」
現在の学校や企業の知識詰め込み教育とは、ずいぶん違うやりかたである。
個が独立して、一人ずつが考え、出来上がった物を集団として共有する、という考え方でないと、本当に力強くて、豊かな社会(組織)にならない。
それをしない教育、研修は、必ず形骸化し、出来上がった形だけを追いかけるようなものになってしまう。・・・ステレオタイプ・・・決まり切った形でやるようになると、それ自身が様々な失敗を生み出す元になっていく。これを防ぐには、自分で考え、自分でつくる、ということが、一番大事である。


(例)2004年3月26日の、六本木ヒルズでの回転ドア事故
6歳の男の子が回転ドアのすきまに頭をはさまれ死亡。もし、センサーが働かなかったら、壊れたら?ということなど考えられていなかった。
「安全なドアを作ろう」なんて、そういうぬるいことを目標にするな!たとえ、壊れたり誤作動したりで挟まれてしまっても危なくない、危なさのないドアを作れ!
「利便だけを受けていて、危険を負担しないような社会はおかしい。」そう考えると、いろんなことをやらなくてはならない・・・。
自分で考え、自分でつくるうち、誰もが真のベテランになれる。

「真のベテラン」へのプロセス・・・
失敗する→自分の目で観察(なぜ失敗したか)→自分の頭で考え(同じ失敗を繰り返さないためにはどうすればいいか)→自分の体で行動(失敗を解決、克服)→自分で結果に責任を持つ→自分の力になる→真のベテランになれる

一度このプロセスを通ると、自分の頭の中に、そういう考え方、やり方ができあがる。人からもらった物ではなく、自分で作った物。だから、一生使えます!
たとえれば、自転車に乗る事は、一度乗れた人は一生忘れない。それと同じように、自分で獲得した考え方、体の動かし方は、一度身につけば、一生使えるのです。
日本は、自分で考える前に、どこかにお手本があって、これをやればいい、さもなければ、これをやらなければいけない、ということだけ考え、それを上手に実現することで、大きく発展してきた。そのため、自分で考えるよりは、どこかのだれかが作った基準なり考えに、上手に倣っていくこと、取り入れることが、豊かな社会をつくるんだという、間違った考えの方向に動いてしまっている。


(例)みずほ銀行決済システムトラブル
3行が合併し、みずほ銀行が発足したとき、決済機能のシステムがダウンし、引き落としが出来なかったり、2重に引き落とされたりが頻発した。
全体を見ない、再構築しないで、3銀行の今までのプログラムへの付け足し、建て増し設計のツケが吹き出した。
決済機能が命の銀行で、あまりにもずさんな管理。自分で考え行動しない「偽ベテラン」のマニュアル人間が上に立つと、こんな事が起こる。
トラブル仮想演習をやらなくても、いままでうまくいっていたからとマニュアル通りやっていたから、こんなトラブルがおこった。


「自分の目で観察しなさい。自分の頭で考えなさい。自分の体で行動しなさい。結果に自分で責任を持ち、自分はどう動けばいいか、考えればいいかを、自分で作りなさい!そうすれば、必ず、真のベテランになれます」 by 畑村洋太郎

http://www.nhk.or.jp/shiruraku/200609/monday.html

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